退職証明書をもらえないときの対処法【弁護士解説】

退職証明書は転職先の入社手続きや失業保険の申請など、退職後すぐに必要となる重要な書類です。ところが、実際には「会社が発行してくれない」「依頼しても無視される」「解雇理由を勝手に書かれた」などのトラブルが多く発生しています。しかし、退職証明書の発行は法律で義務づけられており、企業が拒否することはできません。この記事では、退職証明書がもらえないときの対処法を弁護士が分かりやすく解説します。
弁護士法人みやびは全国で退職代行サービスを提供している老舗の法律事務所です。退職代行完了後に退職証明をもらえないなどのトラブルが発生した際も、無期限でアフターフォローさせていただきます。まずはお気軽にお問い合わせください。
退職証明書をもらえないのは違法か|まず知るべき基本と結論

最初に、退職証明書の基本的な役割と、会社に発行義務があるかどうかを整理しておく必要があります。企業とのやり取りに不安を感じている方も、ここで法的な前提を理解することで、適切に対応できるようになります。
退職証明書とは何か|提出先と用途
退職証明書とは、従業員が退職した事実を証明する書類で、転職先の企業やハローワークでの手続きに使用されます。特に「採用時に前職の在籍状況を確認したい」「失業保険の受給要件を確認したい」といった場面で求められることが多く、退職後の生活に直結する重要書類です。会社は請求された場合、必ず発行しなければならず、依頼者が希望する記載項目に基づいて作成する必要があります。
退職証明書と離職票の違い
退職証明書と離職票は用途が異なります。離職票は失業保険の申請に必要な公的書類で、会社が退職後10日以内を目安に発行手続きを行います。一方、退職証明書は従業員が請求した時点で発行される書類で、転職先への提出や在籍証明として利用されます。企業によっては混同されることがありますが、両者はまったく別物であり、退職証明書は従業員が必要と判断した時点で請求できる点が大きく異なります。
退職証明書の発行義務|労働基準法22条のポイント

退職証明書は労働基準法22条によって「会社は労働者が請求したら必ず発行しなければならない」と明確に定められています。提出先が転職先でもハローワークでも、会社側には拒否権がありません。ここでは、企業の義務と、申請時に注意すべき記載項目について整理します。
会社は退職証明書を拒否できない仕組み
労働基準法22条1項では、退職者から請求があった場合、会社は「遅滞なく」退職証明書を交付しなければならないと規定されています。退職理由や在籍期間など、退職者が指定した項目のみを記載する仕組みで、会社が任意の項目を勝手に記載することは認められていません。担当者不在や繁忙を理由に引き延ばす行為も、法律上は正当化されません。
記載できる項目と申請時の注意点
退職証明書に記載できる項目は、在籍期間・業務内容・地位・賃金・退職理由など、法令で明確に定められています。特に退職理由は「自己都合」「会社都合」など、転職や失業保険の手続きに影響するため慎重な確認が必要です。また、退職者が不要と指定した項目について会社が記載することは禁止されています。誤記がある場合は訂正を求めることができ、応じない場合は労基署への相談が有効です。
退職証明書がもらえない理由と、会社が拒否する背景

退職証明書は本来「請求すれば必ず発行される」書類ですが、現場ではさまざまな理由でスムーズに受け取れないケースが見られます。多くは事務的な遅延ですが、稀に嫌がらせや不当な引き止めが背景にある場合もあります。ここでは、実務でよく起こる“もらえない理由”を背景と併せて解説します。
担当者不在・事務処理遅延のケース
最も多いのは単純な事務処理の遅延です。人事担当者が不在、繁忙期、書類の準備不足などの理由で発行が後回しになることがあります。これは悪意ではなく社内オペレーションの問題であり、正式な依頼と期限の提示でスムーズに進むことがほとんどです。
記載内容でもめるケース(解雇理由など)
退職理由の扱いをめぐって発行が止まるケースもあります。特に「解雇か自己都合か」で認識が異なる場合、会社側が記載をためらったり誤った内容を記載しようとすることがあります。しかし、退職証明書は“労働者が指定した項目のみ”を書く仕組みであり、会社が項目を勝手に追加することはできません。
嫌がらせ・引き止め目的のケース
一部の企業では、退職者に圧力をかけるためにあえて発行を遅らせたり、退職手続きを妨害するケースがあります。これは法律違反であり、労働基準監督署への申告や弁護士介入によって迅速に対応できる問題です。特に退職トラブルがある場合は早めに専門家へ相談することで被害を抑えられます。
退職証明書をもらえないときの対処法【弁護士監修】

退職証明書の発行は法的義務であり、会社が正当な理由なく拒否することはできません。それでも現場では、担当者不在や嫌がらせなどにより発行が進まないケースがあります。ここでは、会社が動かない場合に取るべき具体的な手順を、優先度と効果の高い順に整理して解説します。
まず確認すべきポイント(申請方法・指定項目)
最初に「申請方法が誤っていないか」を確認します。退職証明書は“労働者が希望する記載項目のみ”を書く仕組みのため、項目の指定漏れがあると会社が処理を止める場合があります。また、口頭依頼だけでは事務処理が滞ることが多いため、正式な文書(メール)で依頼したかも確認しましょう。
会社への正式依頼の方法
正式な依頼はメールまたは書面で行います。依頼日・必要項目・期限を明記し、会社の事務処理を促すことが重要です。特に「いつまでに必要か」を明確にしないと後回しにされるケースが多いため、具体的な期限を設定することが効果的です。返信がない場合でも、記録が残るため後続の労基署申告に有利になります。
労基署・弁護士へ相談すべきライン
以下のような場合は、企業側の義務違反の可能性が高く、専門家への相談が推奨されます。
・依頼しても1週間以上放置される
・不当な理由(嫌がらせ・引き止め)で発行を拒否される
・退職理由を勝手に書かれそうになっている
労働基準監督署への申告や弁護士の介入により、企業へ正式な指導・是正を求められるため、書類の発行が迅速に進むケースが大半です。
替え時に「退職日の証明」として参照されることがあるため、手続き開始前に自治体の案内を確認することが重要です。
退職証明書がもらえないと発生するトラブル

退職証明書を受け取れない状態が続くと、転職手続きや公的手続きに影響が及び、生活上の支障が発生することがあります。ここでは、特に多い2つの代表的なトラブルを具体的に解説します。
入社日の延期リスク
転職先の企業から退職証明書の提出を求められている場合、書類が揃わないことで「入社日を遅らせてほしい」と言われるケースがあります。特に上場企業・外資系・大手企業は書類管理が厳格で、不備があれば入社手続きがストップする可能性があります。提出期限が迫っている場合は、会社へ正式に依頼した上で、それでも遅延する場合は弁護士に相談することで迅速化が期待できます。
失業保険手続きの遅延
失業保険の申請時には「離職票」が必須ですが、ハローワークから退職証明書の確認を求められることもあります。退職証明書が手元にない状態が長引くと、申請日が遅れ、給付開始時期にも影響が出ます。特に離職区分の確認が必要なケースでは、退職証明書の提出を求められやすく、書類未入手のまま放置すると生活リスクにつながるため注意が必要です。
弁護士法人みやびのアフターサポート|退職証明書トラブルにも対応

弁護士法人みやびでは、退職代行サービスを依頼された方に対し、退職後の書類トラブルにもアフターサポートを提供しています。退職証明書の未発行・記載内容の誤り・企業からの不当な引き延ばしなど、退職後に起きがちな問題について、弁護士が法的観点から対応方針を案内します。
退職証明書が発行されない場合のアフターサポート
退職代行完了後、会社が退職証明書の発行を拒否したり、理由のない遅延を続けるケースがあります。このような状況では、弁護士法人みやびが正しい取得方法や法的根拠を利用者へ案内し、企業側への適切な働きかけ方をアドバイスします。必要に応じて、会社の対応が法的に問題があるか判断し、追加の対処が必要な場合にはその方法を詳しく説明します。

佐藤 秀樹
弁護士
平成12年慶應義塾大学法学部法律学科卒。 平成15年に司法試験合格後、片岡法律事務所入所。
債権回収、相続問題といった一般民事事件から、M&A、事業再生、企業間取引
労務管理、知的財産権などの企業法務まで、数多くの実務に従事する。
平成19年からは慶應義塾大学法科大学院講師(実務家ゼミ担当)及び慶應義塾大学法学研究所講師を務める。
平成21年に弁護士法人みやびを開設し、現在に至る。
退職証明書をもらえない問題に関するよくある質問(FAQ)
退職証明書は転職・失業保険・社会保険の切り替えなどに直結する重要書類です。しかし実務では「会社が発行してくれない」「遅延する」「記載内容でもめる」などのトラブルが多く見られます。ここでは、本文の内容に基づき、特に相談の多い質問をまとめています。
退職証明書は会社に請求すれば必ずもらえますか?
はい。労働基準法22条により、退職者が請求した場合、会社は退職証明書を「遅滞なく」交付しなければなりません。企業側に拒否権はありません。
会社が退職証明書の発行を遅らせるのは違法ですか?
担当者不在や事務遅延などの事情はありますが、法律上は正当化されません。明確な期日を示しても対応がない場合、義務違反にあたる可能性があります。
退職証明書にはどんな項目が記載されますか?
在籍期間、業務内容、地位、賃金、退職理由など、法令で決められています。また「書いてほしい項目」だけを指定でき、会社が勝手に追加記載することはできません。
退職証明書と離職票はどう違いますか?
離職票は失業保険の申請に使う公的書類で、退職後10日前後に会社が発行します。一方、退職証明書は従業員が必要と判断した時点で請求でき、転職先の手続きなどで提出します。
正式に依頼したのに退職証明書が届かないときはどうすればいいですか?
まずはメールで再依頼し、必要項目と期限を明記します。それでも動かない場合は労働基準監督署への相談や、弁護士に介入してもらうことで早期解決が期待できます。
会社が不当な退職理由を記載しようとしています。訂正できますか?
できます。退職証明書は労働者が指定した項目に基づいて作成されるため、不要な記載や誤った記載がある場合は訂正を要求できます。
退職証明書が手元にないと転職先の入社手続きに影響しますか?
影響が出る可能性があります。特に大手企業や外資系は書類管理が厳しく、証明書が揃うまで入社日が延期されるケースがあります。





