会社内の職場いじめや嫌がらせは退職すべきか。解決方法も紹介

職場でいじめや嫌がらせを受けている場合、無理に働き続けることだけが選択肢ではありません。暴言や無視、仲間外れ、仕事を与えないといった行為が続いているのであれば、現在の職場を離れるために退職を選ぶこともできます。
この記事では、職場いじめや嫌がらせで退職を考えている場合に、辞める前にやることから退職方法、会社都合の考え方、退職後の対応まで順番に解説します。
この記事の結論
- 職場いじめから離れるために退職することも選択肢の一つ
- 退職する前に、いじめや嫌がらせの証拠をできる限り残しておく
- 退職理由として職場いじめの詳細を会社へ伝えなければ退職できないわけではない
- 職場いじめがあっても、自動的に会社都合退職になるわけではない
- 退職しても、職場いじめについて慰謝料や労災などを検討できる場合がある
- 会社との交渉や金銭請求が必要な場合は、弁護士への相談を検討する
職場いじめや嫌がらせで退職してもいい?

職場いじめや嫌がらせが続いているのであれば、退職して職場から離れることは選択肢の一つです。いじめを受けながら働き続けることを前提に考える必要はありません。
ただし、一時的な人間関係のトラブルなのか、今後も改善が期待できない状況なのかによって判断は変わります。会社への相談で改善できる可能性がある場合は相談する方法もありますが、心身への影響が出ている場合は、無理に解決を待たず退職を検討することも重要です。
職場いじめから離れるために退職するのも選択肢
職場いじめを受けていても、「自分が辞めるのは納得できない」「退職したら逃げたことになる」と考えて、退職をためらうことがあります。
しかし、退職は職場いじめを受けた側の責任を認める行為ではありません。会社を辞めることと、いじめを行った相手や会社の責任は別の問題です。
また、退職したからといって、職場いじめについて後から相談したり、一定の場合に法的な責任を追及したりすることが直ちにできなくなるわけではありません。退職前に証拠や関係資料を保存したうえで、まず職場から離れるという判断も考えられます。
心身に不調が出ているなら職場から離れることを優先する
職場へ行こうとすると強い不安を感じる、眠れない、食欲がない、動悸がするなど、心身に不調が出ている場合は注意が必要です。
このような状態で無理に出勤を続けるのではなく、必要に応じて医療機関を受診し、休職や退職を含めて職場から離れることを検討してください。
特に職場いじめによって精神的な不調が生じている場合は、後から経緯を確認できるよう、いつ頃からどのような症状が出たのか、どのようないじめや嫌がらせを受けていたのかについても記録しておくことが大切です。

職場いじめで退職する前にやること

職場いじめを理由に退職する場合は、会社へ退職を伝える前にできる範囲で準備をしておきましょう。退職後は社内メールやチャット、社内システムなどにアクセスできなくなる可能性があるため、必要な記録や書類は在職中に確認しておくことが重要です。
特に職場いじめの事実を会社へ申し出る場合や、退職後に離職理由、労災、慰謝料などについて争いになった場合は、いじめがあったことやその経緯を示す資料が重要になります。
いじめや嫌がらせの証拠を残す
職場いじめを受けた日時、場所、相手、具体的な言動などを記録しておきましょう。暴言や威圧的な発言であれば録音、メールやチャットによる嫌がらせであればメッセージの保存など、実際の行為を確認できる資料が有効です。
録音などが残っていない場合でも、いつ、どこで、誰から、何をされたのかを継続して記録しておくことには意味があります。後からまとめて作成するのではなく、いじめを受けた都度、できるだけ具体的に記録しておくと状況を説明しやすくなります。
ただし、個人情報や会社の機密情報などを無関係に持ち出すことは避け、職場いじめに関係する資料を中心に整理してください。
雇用契約書・就業規則・給与明細などを保存する
退職前には、雇用契約書や労働条件通知書、給与明細など、自分の雇用条件を確認できる書類も整理しておきましょう。退職日や未払い賃金、有給休暇などについて会社と確認が必要になった場合に役立ちます。
就業規則についても、退職手続きや休職、ハラスメント相談窓口などの規定を確認しておくとよいでしょう。
心身に不調がある場合は医療機関を受診する
職場いじめによって眠れない、強い不安が続く、仕事へ行けないなどの症状が出ている場合は、無理に出勤を続けず医療機関への受診を検討してください。
診察を受ける際は、症状だけでなく、職場でどのような出来事があり、いつ頃から体調が悪化したのかを医師へ伝えることも大切です。職場での出来事と症状の経過が診療記録に残ることは、後に労災申請などを検討する場合にも重要な資料となる可能性があります。
社内の相談窓口や労働局などへ相談する
退職を決める前に状況の改善を求めたい場合は、上司や人事、社内のハラスメント相談窓口などへ相談する方法があります。相談するときは口頭だけで済ませず、メールなど記録が残る方法も活用すると、いつ会社へ相談したのかを後から確認できます。
社内で相談しにくい場合や、相談しても対応してもらえない場合は、都道府県労働局などに設置されている総合労働相談コーナーなど、外部の相談窓口を利用する方法もあります。
なお、会社へ相談してからでなければ退職できないわけではありません。職場にいること自体が大きな負担になっている場合は、相談による解決にこだわらず、退職や休職などを含めて自分が職場から離れる方法を検討することも必要です。
職場いじめ・嫌がらせに該当する主なケース

職場いじめや嫌がらせには、暴言や無視など分かりやすい行為だけでなく、仕事を与えない、必要な情報を共有しないといった業務上の行為として現れるケースもあります。
厚生労働省は職場におけるパワーハラスメントについて、代表的な言動の類型として「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過小な要求」「個の侵害」の6つを示しています。ただし、これらは代表例であり、該当する行為がすべて法律上のパワーハラスメントになるとは限りません。
暴言・人格否定・威圧的な叱責
「役に立たない」「辞めてしまえ」など人格を否定する発言を繰り返す、大勢の前で必要以上に怒鳴る、長時間にわたって威圧的な叱責を続けるといった行為が挙げられます。
仕事上のミスを注意・指導すること自体が直ちに職場いじめになるわけではありません。業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動かどうかが重要になります。
無視・仲間外れ・情報を共有しない
特定の従業員だけ会話から外す、挨拶をしても意図的に無視する、必要な会議に参加させないなど、人間関係から切り離す行為もあります。
また、業務に必要な情報を意図的に伝えず、その結果として仕事に支障が出るような状況も考えられます。こうした行為は録音だけでは残しにくいため、メールやチャット、会議への参加状況、具体的な出来事を記録しておくことが重要です。
仕事を与えない・無理な仕事を押し付ける
能力や経験とかけ離れた仕事を十分な支援もなく押し付けたり、反対に仕事をほとんど与えず長時間放置したりするケースもあります。
ただし、業務量の増減や配置転換があっただけで職場いじめと判断できるわけではありません。業務上の必要性や本人の能力・経験、行為が継続している期間など、具体的な事情を踏まえて判断する必要があります。
退職させるために嫌がらせをする
本人から退職を申し出ていないにもかかわらず、退職させる目的で仕事を取り上げる、孤立させる、繰り返し退職を迫るなどの行為が行われることもあります。
このような状況で自分から退職届を提出すると、後になって会社との間で退職に至った経緯や離職理由について認識が食い違う可能性があります。退職へ追い込むような嫌がらせを受けている場合は、会社から言われるまま退職手続きを進めず、まず発言や行為の記録を残しておくことが重要です。
職場いじめで会社を退職する方法

職場いじめを受けている場合でも、退職手続きの基本的な考え方は通常の退職と変わりません。ただし、上司と直接話すことが大きな負担になっている場合や、会社から退職を引き止められる可能性がある場合は、退職の意思を記録として残すことも重要です。
退職できる時期は雇用契約によって異なる
退職できる時期を考える際は、期間の定めがない雇用契約か、有期雇用契約かを確認する必要があります。
期間の定めがない雇用契約では、民法627条1項により、原則として退職の申入れから2週間が経過すると雇用契約が終了します。会社の同意がなければ退職できないというものではありません。
一方、契約社員など期間の定めがある雇用契約を契約期間の途中で退職する場合は、無期雇用と同じようには考えられません。民法628条では「やむを得ない事由」がある場合に契約途中で解除できると定められており、職場いじめの内容や心身への影響など、具体的な事情を踏まえた判断が必要になります。
有給休暇を使って退職日まで出社しない方法もある
退職日まで会社へ出勤することが難しい場合、残っている年次有給休暇を取得し、出勤する日数を減らす方法があります。
たとえば退職の意思を伝えた後、退職日までの期間について有給休暇を取得できれば、職場いじめを行っている相手と接触せずに退職日を迎えられる場合があります。
ただし、有給休暇の残日数や退職日までの日数によって対応は異なります。体調不良などで出勤そのものが難しい場合には、有給休暇だけでなく欠勤や休職などを含めて検討することになります。
会社が退職を拒否した場合は意思表示の記録を残す
会社から「人手不足だから辞められない」「後任が決まるまで退職を認めない」などと言われても、それだけで退職できなくなるわけではありません。
退職届を受け取ってもらえない場合や、退職の意思を伝えても取り合ってもらえない場合は、いつ会社へ退職を申し入れたのかを後から確認できる形で意思表示を残すことが重要です。
また、退職を申し出たことで職場いじめが悪化したり、損害賠償を示唆されるなど新たなトラブルが生じたりした場合は、自分だけで会社とやり取りを続けず、外部の相談窓口や弁護士への相談も検討してください。
職場いじめを理由に退職するときの伝え方

職場いじめが退職のきっかけであっても、退職するためにいじめの内容をすべて会社へ説明する必要はありません。一方で、離職理由をめぐる問題や、退職後に職場いじめについて責任を追及する可能性がある場合は、会社へどのように伝え、どのような記録を残すかも考えておく必要があります。
退職理由はいじめと伝えなくても退職できる
退職の意思を伝える際に、「○月○日にこのようないじめを受けた」など、具体的な事情まで上司へ説明しなければ退職できないわけではありません。
特に、いじめを行っている上司へ直接事情を説明することが精神的な負担になる場合は、無理に詳しく話す必要はありません。退職する意思と希望する退職日を明確に伝えることが重要です。
ただし、職場いじめが原因で退職したことを後から会社へ主張したい場合は、何も記録を残さないまま退職するのではなく、いじめの内容や会社へ相談した経緯などを整理しておくことをおすすめします。
退職届にいじめの詳細を書く必要はない
退職届に職場いじめの経緯を詳しく書かなければならない決まりはありません。「一身上の都合により退職いたします」といった一般的な記載で退職届を提出することもできます。
ただし、退職届の記載と、雇用保険上の離職理由がどのように判断されるかは同じ問題ではありません。職場いじめや嫌がらせが原因で退職したにもかかわらず、会社が作成した離職票の離職理由に納得できない場合は、ハローワークへ事情を申し出ることができます。
そのため、退職届を簡潔な内容にする場合でも、職場いじめの証拠や会社へ相談した記録などは別途保存しておきましょう。
いじめを会社へ申告する場合は記録が残る方法で伝える
職場いじめが原因で退職することを会社へ伝える場合は、口頭だけではなく、メールや書面など後から内容を確認できる方法を利用することも検討してください。
たとえば、いつからどのような行為を受けていたのか、誰に相談したのか、会社がどのように対応したのかなどを具体的に整理しておくと、退職に至った経緯を説明しやすくなります。
特に、会社から退職を促されている場合や、職場いじめによって退職へ追い込まれていると考えている場合は、自分から退職届を提出する前に、これまでの経緯と証拠を整理することが重要です。
職場いじめで退職に追い込まれている場合はどうする?

職場いじめの中には、単に人間関係が悪化しているだけではなく、特定の従業員を辞めさせる目的で嫌がらせを繰り返し、退職へ追い込もうとするケースもあります。
仕事を与えられなくなった、突然担当業務から外された、繰り返し退職を勧められるなどの状況が続いている場合は、すぐに自分から退職届を提出するのではなく、まず会社から受けた言動や対応を記録しておくことが重要です。
自分から退職届を出す前に状況を整理する
会社から退職を求められている状況で、自分から退職届を提出すると、会社側から「本人の意思で退職した」と扱われる可能性があります。
もちろん、自分自身が早く職場から離れることを優先し、自ら退職する選択もできます。ただし、会社から退職を迫られていることに納得していない場合や、離職理由、慰謝料などについて後から争う可能性がある場合は、退職届を提出する前に状況を整理しておくことが大切です。
また、会社から退職届や合意書などへの署名を求められても、その場ですぐに署名する必要はありません。記載されている退職理由や条件を確認し、内容に疑問がある場合は署名前に専門家へ相談する方法もあります。
退職強要や追い出しが続く場合は外部へ相談する
会社から繰り返し退職を迫られている場合や、退職へ追い込むための嫌がらせが続いている場合は、社内だけで解決しようとせず、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなどへ相談する方法があります。
また、会社との交渉が必要な場合や、職場いじめについて慰謝料などの請求を検討している場合は、弁護士への相談も選択肢となります。
特に注意したいのは、「会社を辞めること」と「会社から提示された退職条件に同意すること」は別だという点です。職場から早く離れたい場合でも、会社から提示された条件を十分に確認せずに合意する必要はありません。

職場いじめで退職すると会社都合になる?

職場いじめや嫌がらせが原因で自分から退職した場合でも、雇用保険上、必ず通常の自己都合退職として扱われるとは限りません。
上司や同僚などから故意に排斥されたり、著しい冷遇や嫌がらせを繰り返し受けたりしたことによって離職した場合は、特定受給資格者に該当する可能性があります。厚生労働省も、いじめや暴力、暴言などを繰り返し受けたことによる離職を判断対象として示しています。
職場いじめがあれば必ず会社都合になるわけではない
職場いじめを理由に退職しただけで、自動的に雇用保険上の離職理由が有利な扱いになるわけではありません。
たとえば、上司から仕事上のミスについて注意や叱責を受けたという事情だけでは、特定受給資格者の判断基準に該当するとは限りません。一方で、特定の従業員を故意に排除する、著しい冷遇や嫌がらせを繰り返すなど、就業環境を著しく害する言動によって退職した場合は、特定受給資格者に該当する可能性があります。
そのため、「職場いじめがあったか」だけではなく、どのような行為をどの程度受け、それによって退職に至ったのかが重要です。
離職理由に納得できない場合はハローワークへ申し出る
会社が作成した離職票に記載された離職理由と、自分が認識している退職理由が異なる場合は、ハローワークで雇用保険の受給手続きをする際に異議があることを申し出ることができます。
離職理由は会社の記載だけで最終決定されるものではありません。ハローワークが本人と事業主双方の主張や資料を確認し、最終的な離職理由を判断します。
そのため、職場いじめが原因で退職したにもかかわらず、離職票が通常の自己都合退職として処理されている場合でも、そのまま受け入れなければならないわけではありません。
職場いじめの証拠が離職理由の判断で重要になる
ハローワークへ職場いじめによる退職だったことを申し出る場合は、その経緯を確認できる資料を用意しておくことが重要です。
録音、メールやチャット、会社への相談記録、配置転換に関する書類など、いじめや嫌がらせの内容を確認できる資料があれば提出を検討します。厚生労働省も、離職理由を証明する書類などがある場合は、手続きの際に持参するよう案内しています。
証拠の種類や内容によって評価は異なるため、「この資料があれば必ず会社都合になる」と考えるのではなく、退職に至った経緯をできる限り具体的に説明できるよう準備しておきましょう。
離職理由によって失業給付の扱いが変わる
雇用保険の基本手当は、離職理由によって受給資格の要件や所定給付日数、給付制限などの扱いが異なる場合があります。
職場いじめによる離職について特定受給資格者に該当するかどうかは、最終的にハローワークが個別の事情を確認して判断します。そのため、職場いじめが原因で退職した場合は、離職票に記載された理由だけを確認して終わりにせず、実際の退職理由と異なっていないか確認することが大切です。
職場いじめで会社と直接やり取りできない場合の退職方法

職場いじめを受けていると、上司へ退職を伝えること自体が大きな負担になる場合があります。退職を伝えた後に暴言を受けることが不安だったり、会社から何度も連絡が来ることを避けたかったりする場合は、必ずしも対面で退職を申し出る方法だけにこだわる必要はありません。
自分で退職の意思を伝えることが難しい場合は、書面で通知するほか、退職代行を利用する方法もあります。ただし、会社との交渉や慰謝料などの請求まで必要になる場合は、依頼先によって対応できる範囲が異なります。
退職代行を利用して会社との直接連絡を避ける
自分から会社へ退職を伝えることが難しい場合は、退職代行を利用して退職の意思を会社へ伝えてもらう方法もあります。職場いじめを行っている上司と直接話したくない場合や、会社からの連絡そのものが精神的な負担になっている場合に選択肢となります。
ただし、退職代行は運営主体によって対応できる業務の範囲が異なります。単に本人の退職意思を会社へ伝える場合と、退職日や未払い賃金などについて会社との交渉が必要な場合を分けて考える必要があります。
退職条件や慰謝料などの交渉が必要なら弁護士へ相談する
職場いじめを伴う退職では、退職の意思を会社へ伝えるだけでは解決しないケースがあります。たとえば、会社が退職を認めない、未払い賃金がある、職場いじめについて慰謝料を請求したい、会社から損害賠償を求められているといった場合です。
弁護士であれば、依頼を受けた範囲で本人の代理人として会社と交渉できます。職場いじめについて慰謝料などの金銭請求を検討する場合も、証拠や具体的な経緯を確認したうえで法的な対応を検討できます。
職場いじめが関係する退職では、「会社を辞められれば終わり」とは限りません。退職と同時に会社との交渉や法的な請求が必要になりそうな場合は、退職手続きを進める前の段階で弁護士へ相談することも選択肢です。
職場いじめで退職する場合に知っておきたい法的なポイント

職場いじめを理由に会社を辞める場合、退職手続きだけでなく、いじめを受けたことについてどのような対応ができるのかも確認しておきましょう。退職したことだけを理由に、在職中に受けた職場いじめについて責任を追及できなくなるわけではありません。
また、職場におけるパワーハラスメントについては、事業主に防止措置を講じる義務があります。相談体制の整備や、相談を受けた場合の事実関係の確認、被害者への配慮、再発防止なども事業主に求められています。
職場いじめで精神疾患を発症した場合は労災が認められる可能性がある
職場いじめやパワーハラスメントによる強い心理的負荷が原因となって精神障害を発症した場合、一定の要件を満たせば労災と認定される可能性があります。
厚生労働省の精神障害の労災認定基準でも、パワーハラスメントなどの出来事は心理的負荷を評価する対象に含まれています。単に「職場いじめを受けた」というだけで労災になるわけではなく、対象となる精神障害を発病していることや、業務による強い心理的負荷が認められることなどを個別に判断します。
退職した後でも労災請求を検討できる場合があるため、職場いじめによって精神的な不調が生じている場合は、退職前後を問わず医療機関を受診し、職場で起きた出来事や症状の経過を伝えておくことが大切です。
慰謝料・損害賠償を請求できる場合がある
職場いじめの内容によっては、行為者や会社に対して慰謝料などの損害賠償を請求できる場合があります。
ただし、職場で不快な思いをしたり、人間関係のトラブルがあったりしただけで、当然に慰謝料が認められるわけではありません。具体的な言動が違法と評価できるか、会社に法的責任が認められるか、どのような損害が生じたのかなどを個別に検討する必要があります。
慰謝料などの請求を検討している場合は、退職する前から証拠を保存し、必要に応じて弁護士へ相談しておくとよいでしょう。
会社から示談書・合意書を提示されたら内容を確認してから署名する
退職の際に、会社から退職条件を記載した合意書や示談書への署名を求められることがあります。この場合は、書面の内容を確認せず、その場で署名することは避けましょう。
特に、「会社に対して今後一切請求しない」「本件について債権債務がない」といった内容が含まれている場合、その後の請求に影響する可能性があります。
職場いじめについて慰謝料などの請求を検討している場合や、合意書の意味が分からない場合は、署名する前に弁護士へ相談し、内容を確認することが重要です。
職場いじめで退職したその後にやること

職場いじめを理由に退職した後は、離職票などの書類を確認し、必要に応じて雇用保険の手続きを進めます。また、いじめによって心身に不調が生じている場合は、すぐに転職活動を始めることだけを考えず、休養や利用できる制度について確認することも大切です。
退職後に職場いじめについて会社側の責任を追及したい場合も、保存しておいた証拠や在職中の経緯を整理したうえで対応を検討します。
離職票などの退職書類を確認する
退職後は、離職票や源泉徴収票、雇用保険被保険者証など、退職に伴って必要となる書類を確認しましょう。転職先で必要になる書類と、雇用保険の手続きで必要になる書類があります。
特に職場いじめが原因で退職した場合は、離職票に記載された離職理由を確認することが重要です。実際の退職理由と会社側の記載が異なる場合は、雇用保険の受給手続きの際にハローワークへ異議があることを申し出ることができます。
失業給付など必要な手続きを行う
退職後すぐに次の会社へ就職しない場合は、ハローワークで雇用保険の基本手当について確認しましょう。基本手当を受給するには、原則として働く意思と能力があり、求職活動を行っていることなどの要件を満たす必要があります。
前述したとおり、職場いじめや嫌がらせが原因となった離職では、具体的な事情によって特定受給資格者に該当する可能性があります。会社が記載した離職理由だけで判断せず、実際の退職経緯をハローワークへ説明できるよう資料を準備しておきましょう。
すぐに働けない場合は休養や利用できる制度を確認する
職場いじめによって心身の状態を崩し、退職後すぐに働けない場合は、無理に転職活動を始める必要はありません。
雇用保険の基本手当は、すぐに働ける状態であることが受給の前提となるため、病気やけがで一定期間働けない場合は、受給期間の延長を利用できる場合があります。また、退職前から健康保険の傷病手当金を受給していた場合など、一定の要件を満たせば退職後も継続して受給できることがあります。
職場いじめによる精神疾患について業務との因果関係が認められる場合は、労災保険の対象となる可能性もあります。利用できる制度は本人の状況によって異なるため、体調を優先しながら必要な手続きを確認してください。
職場いじめと退職に関するよくある質問
職場いじめを理由に退職する場合は、証拠がない場合の対応や退職できる時期、労災、転職への影響などについて疑問が生じることがあります。ここでは、職場いじめと退職に関するよくある質問に回答します。
職場いじめの証拠がなくても退職できますか?
はい。職場いじめの証拠がなければ退職できないわけではありません。退職そのものと、職場いじめの事実を証明することは別の問題です。
ただし、職場いじめが原因で退職したことを会社やハローワークへ説明する場合や、労災、慰謝料などを検討する場合は、証拠が重要になります。録音やメールなどが残っていなくても、受けた行為の日時・場所・相手・内容などをできるだけ具体的に整理しておきましょう。
職場いじめで退職すると転職で不利になりますか?
職場いじめを理由に退職したことだけで、転職できなくなるわけではありません。採用面接では退職理由を聞かれることがありますが、職場で受けたいじめの詳細をすべて説明する必要はありません。
前職への不満だけを長く説明するのではなく、退職に至った事情を簡潔に伝えたうえで、次の職場でどのように働きたいのかを説明できるよう準備しておくとよいでしょう。




