正社員なのに有期雇用契約は違法?対応策を弁護士が解説

正社員なのに有期雇用契約は違法?対応策を弁護士が解説

正社員なのに有期雇用契約と言われた場合、「これは違法ではないのか」と不安になります。一般的に正社員は無期雇用というイメージが強いため、有期契約とされることに違和感を覚えるのは当然です。

しかし、法律上「正社員=必ず無期雇用」とは決まっていません。有期雇用であっても正社員と呼ばれる制度が存在する一方で、形式だけ有期にして労働者の権利を制限している違法なケースもあります。

本記事では、正社員なのに有期雇用契約とされるケースが違法にあたるのかを紹介し、違法となる可能性が高いパターンや具体的な対応策、さらに雇止めや退職に直面した場合の選択肢まで弁護士の目線で具体的に解説します。

【結論】
・正社員という名称だけで直ちに違法とは限らない
・有期雇用の正社員制度が法的に認められる場合もある
・違法かどうかは契約の実態や更新状況で判断される
・更新を繰り返している場合は無期転換申込権が発生する可能性がある
・雇止めを通告された場合は早急な対応が重要になる

目次

正社員なのに有期雇用契約は本当に違法なのか

正社員なのに有期雇用契約は本当に違法なのか

正社員なのに有期雇用契約とされている場合、「違法ではないのか」と疑問を持つのは当然です。しかし、法律上は「正社員=必ず無期雇用」とは定められていません。違法かどうかを判断するには、会社が付けた名称ではなく、契約内容や実態を確認する必要があります。

「正社員=無期」とは法律上決まっていない

労働基準法や労働契約法には、「正社員」という明確な定義は存在しません。法律上区別されているのは、「無期労働契約」か「有期労働契約」かという契約期間の違いです。

そのため、企業が「正社員」と呼んでいても、契約書に契約期間の定めがあれば、有期労働契約となります。逆に、契約期間の定めがなければ無期雇用となります。つまり、「正社員」という呼称だけでは違法かどうかは判断できません。重要なのは、労働契約書に期間の定めがあるかどうかです。

違法かどうかは契約名称ではなく実態で判断される

実務上、問題になるのは「形式」と「実態」が一致しているかどうかです。例えば、契約書上は1年更新の有期契約であっても、長年更新が繰り返され、実質的に無期雇用と変わらない働き方をしている場合があります。このようなケースでは、労働契約法19条の雇止め法理や、同法18条の無期転換ルールが問題となります。

また、有期契約であることを理由に、正社員と同様の業務をさせながら一方的に更新を拒否する場合、違法と判断される可能性があります。したがって、「正社員なのに有期だから違法」と短絡的に判断するのではなく、
・契約期間
・更新状況
・業務内容
・会社の説明内容
を総合的に検討する必要があります。

正社員なのに有期雇用契約が法的に認められるケース

正社員なのに有期雇用契約が法的に認められるケース

正社員という名称が付いていても、有期雇用契約が直ちに違法になるとは限りません。法律は「正社員」という呼称ではなく、労働契約の内容と合理性を基準に判断します。したがって、企業の人事制度や雇用目的に合理性があれば、有期契約であっても適法と評価される場合があります。

職種限定・勤務地限定正社員という制度

近年は、多様な働き方に対応するため、職種や勤務地を限定した正社員制度が広がっています。こうした制度では、従来型の総合職とは異なる条件で雇用契約が設計されることがあります。

一定のプロジェクトや業務に限定して雇用する場合、有期契約が合理的とされるケースもあります。重要なのは、業務内容や雇用目的に客観的な合理性があるかどうかです。

移行期間としての有期正社員制度

企業再編や制度変更に伴い、一定期間のみ有期契約を設ける場合もあります。無期雇用へ移行する前提で暫定的に有期契約を設定する設計が採用されることもあります。このような場合、制度の趣旨が明確であり、労働者に不利益が過度に生じない限り、直ちに違法とは評価されません。

もっとも、名目上は移行期間としながら、実際には無期転換を回避する目的で運用されている場合には問題が生じます。制度そのものよりも、その運用実態が法的評価の中心となります。

正社員なのに有期雇用契約が違法になる可能性が高いパターン

正社員なのに有期雇用契約が違法になる可能性が高いパターン

正社員という名称で有期雇用契約が締結されていても、常に適法とは限りません。形式上は有期契約であっても、実態や運用状況によっては違法と評価される可能性があります。ここでは、正社員なのに有期雇用契約である場合の違法性が問題になりやすい典型的なパターンを解説します。

実質的に無期雇用と同じ働き方をしている場合

契約書上は有期契約であっても、業務内容や勤務形態が一般の無期正社員と全く変わらない場合があります。配置転換や昇進制度の適用、長期的な人材育成を前提とした運用がなされている場合、実態は無期雇用に近いと評価されることがあります。

このような状況で、契約期間満了のみを理由に雇止めを行うと、合理性を欠くとして無効と判断される可能性があります。契約期間の形式だけでなく、雇用の実態が重要視されます。

更新を繰り返し雇用継続の期待権が発生している場合

有期契約が長年にわたり更新されている場合、労働者側に「今後も更新される」という合理的な期待が生じることがあります。これを「雇用継続の期待権」といいます。

労働契約法19条は、一定の場合に雇止めを無効とする規定を置いています。更新回数や通算勤務年数、会社の言動などを総合的に判断し、期待権が認められる場合には、単なる期間満了では契約を終了させることができません。正社員という呼称が付いている場合には、なおさら継続期待が強いと評価される可能性があります。

無期転換申込権の行使を妨害している場合

有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者には無期転換申込権が発生します。会社はこの申込みを拒否することができません。しかし、無期転換を回避する目的で契約更新を打ち切ったり、正社員であるにもかかわらず有期契約を繰り返したりする場合には、違法性が問題となります。

特に、無期転換申込権が発生する直前で雇止めを行うなどの行為は、権利濫用と評価される可能性があります。有期契約の形式を維持すること自体が問題なのではなく、労働者の法的権利を実質的に侵害しているかどうかが判断の基準となります。

雇止めされそうなときに知っておくべき法的知識

雇止めされそうなときに知っておくべき法的知識

正社員なのに有期雇用契約とされている場合、最も現実的な問題として浮上するのが「雇止め」です。会社から更新しないと言われたとき、それが直ちに有効になるとは限りません。雇止めには一定の法的制限があり、条件によっては無効と判断される可能性があります。ここでは、雇止めに直面したときに知っておくべき基本的な法的枠組みを紹介します。

雇止め法理とは何か・どんな場合に適用されるか

雇止め法理とは、有期労働契約であっても、一定の場合には契約更新を拒否できないとする考え方です。現在は労働契約法19条に明文化されています。

具体的には、契約更新が反復されている場合や、労働者に契約が更新される合理的な期待が認められる場合には、会社は客観的に合理的な理由がなければ雇止めをすることができません。正社員という名称が付いている場合、労働者側の継続期待はより強く認められる傾向にあります。単に「期間満了だから終了」とするだけでは足りず、更新拒否に合理的理由が必要になります。

雇止め予告のタイミングと会社側の義務

有期労働契約の更新を拒否する場合、会社には一定の説明義務があります。特に、契約が反復更新されている場合や長期にわたって勤務している場合には、突然の雇止めは問題となることがあります。

また、雇止め理由について労働者が証明書の交付を請求した場合、会社はこれに応じる義務があります。理由を明示できない雇止めは、後に紛争となる可能性が高くなります。雇止めは会社の自由裁量ではなく、法的制約のもとで判断されるものです。

雇止めを通告された場合にすぐ取るべき行動

雇止めを告げられた場合、感情的に応じるのではなく、まず契約内容と更新履歴を確認することが重要です。過去の更新回数、会社からの説明内容、就業規則の規定などを整理し、継続期待が認められるかを検討します。口頭での説明だけでなく、書面での通知や理由の明示を求めることも有効です。証拠を残さないまま応じてしまうと、後から争うことが困難になります。

雇止めが適法かどうかは、事案ごとの具体的事情によって判断されます。早い段階で法的観点から整理することが、結果を左右する重要なポイントになります。

正社員なのに有期雇用契約と言われたときの具体的な対応策

正社員なのに有期雇用契約と言われたときの具体的な対応策

正社員として勤務しているにもかかわらず、有期雇用契約であると説明された場合は、感情的に対応するのではなく、事実関係を一つずつ確認することが重要です。違法かどうかは契約内容と運用実態によって判断されます。ここでは、実務上取るべき具体的な対応策を解説します。

契約書と就業規則を確認する

まず確認すべきは、労働契約書に契約期間の定めが明記されているかどうかです。契約期間の有無、更新条項、更新の基準がどのように記載されているかを確認します。

あわせて、就業規則における正社員の定義や、有期契約社員との区分を確認することが重要です。会社がどのような制度設計をしているのかを把握しなければ、違法性の有無は判断できません。書面の内容と実際の運用が一致しているかどうかも確認が必要です。

更新実態を証拠として残す

有期契約が繰り返し更新されている場合、その更新回数や勤務年数は重要な意味を持ちます。過去の契約書、更新通知、評価面談記録、メールなどはすべて証拠になります。会社側が「今回で終了」と突然告げたとしても、これまでの運用状況によっては雇止めが無効になる可能性があります。証拠を残さずに応じてしまうと、後に争うことが困難になります。客観的資料を確保することが、法的判断の出発点になります。

無期転換申込権を適切に行使する

通算契約期間が5年を超えている場合、労働契約法18条に基づき無期転換申込権が発生します。この申込みは、法律上会社が拒否できない権利です。無期転換を希望する場合は、口頭ではなく書面で意思表示を行うことが望ましいです。
申込時期や通算期間の計算方法を誤ると、権利行使が認められない可能性があります。法的要件を満たしているかを確認したうえで、適切に手続を進めることが重要です。

無期転換を拒否された場合は法的争点になる

無期転換の要件を満たしているにもかかわらず会社が拒否する場合、その拒否は無効となる可能性があります。また、無期転換を回避する目的で契約更新を打ち切る場合も、権利濫用と評価されることがあります。

この段階になると、事実関係と証拠を基に法的主張を組み立てる必要があります。個人での交渉が難しい場合には、早めに弁護士へ相談することが重要です。適切な対応を取ることで、不利益を最小限に抑えることが可能になります。

有期雇用契約の正社員が退職・雇止め対応で困ったら退職代行という選択肢

有期雇用契約の正社員が退職・雇止め対応で困ったら退職代行という選択肢

正社員として働いているにもかかわらず有期雇用契約とされ、更新拒否や不当な扱いを受けている場合、法的に争うという選択肢だけが解決策ではありません。状況によっては、トラブルを拡大させずに退職するという判断が合理的な場合もあります。

会社との交渉が難航している、精神的な負担が大きい、直接話し合うことが困難であるといった場合には、退職代行の利用も現実的な選択肢となります。

有期契約でも退職は原則可能

有期労働契約であっても、退職が一切できないわけではありません。やむを得ない事由がある場合には、契約期間の途中でも退職が認められる可能性があります。また、会社との合意により退職することは常に可能です。ただし、有期契約を理由に引き留められたり、損害賠償を示唆されたりするケースもあります。そのような場面では、法的根拠を踏まえた対応が重要になります。

雇止めを回避しつつ円満退職するには弁護士が有効

雇止めや更新拒否をめぐる問題が発生している場合、交渉の進め方によっては不利益な結果につながることがあります。感情的な対立を避けつつ、法的立場を明確にしたうえで退職を進めることが重要です。弁護士が介入することで、会社側に対して法的根拠を示しながら適切な交渉を行うことができます。不当な条件提示や過度な圧力を抑止する効果も期待できます。退職と同時に紛争を拡大させないためには、専門的な判断が不可欠です。

弁護士法人みやびが選ばれる理由

弁護士法人みやびでは、有期雇用契約や雇止めに関する相談を多数取り扱っています。契約内容や更新実態を確認したうえで、退職が最適な選択肢かどうかを判断し、必要に応じて退職代行を行います。弁護士が直接会社と交渉するため、法的根拠に基づいた対応が可能です。無用なトラブルを回避しつつ、依頼者の不利益を最小限に抑える退職を目指します。有期雇用契約をめぐる問題で不安がある場合は、早めに相談することが重要です。

弁護士法人「みやび」は全国の「会社を辞めたいけど辞められない」人に退職代行サービスを提供しています。LINE無料相談・転職サポート・残業代等各種請求にも対応しており、27,500円(税込)から承っています。まずはお気軽にご相談ください。

平成12年慶應義塾大学法学部法律学科卒。 平成15年に司法試験合格後、片岡法律事務所入所。

債権回収、相続問題といった一般民事事件から、M&A、事業再生、企業間取引
労務管理、知的財産権などの企業法務まで、数多くの実務に従事する。

平成19年からは慶應義塾大学法科大学院講師(実務家ゼミ担当)及び慶應義塾大学法学研究所講師を務める。
平成21年に弁護士法人みやびを開設し、現在に至る。

正社員なのに有期雇用契約についてよくある質問

正社員なのに有期雇用契約とされている場合、多くの方が共通して抱く疑問があります。ここでは、特に相談の多いポイントを簡潔に解説します。

正社員なのに有期雇用契約とされている場合、必ず違法になりますか

名称だけでは違法とはいえません。契約内容や更新実態によって判断されます。

正社員なのに有期契約を何度も更新されている場合はどうなりますか

更新が反復されている場合、雇止めが無効になる可能性があります。合理的理由が必要です。

通算5年を超えた場合は自動的に無期雇用になりますか

自動ではなりません。無期転換申込権を行使する必要があります。

有期雇用契約の正社員でも途中退職はできますか

やむを得ない事由があれば可能です。合意退職も選択肢になります。

雇止めを通告された場合、すぐに応じるべきですか

すぐに応じる必要はありません。契約内容と更新状況を確認することが重要です。

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