仕事を辞めたい理由が「人間関係」。退職する基準と問題解決法

人間関係は、仕事を辞める理由として常に上位に挙げられます。上司や同僚とのトラブル、職場の雰囲気になじめないことが原因で退職を考えても、「本当に辞めるべきなのか」「もう少し我慢した方がいいのか」と判断に迷う人もいるでしょう。
この記事では、人間関係で退職を考える判断基準や辞めない方がよいケース、状況を改善するための対処法、退職を言い出せない場合の解決策について弁護士が解説します。
【結論】
・人間関係は仕事を辞める正当な理由の一つになる
・退職を決断する前に、改善できる可能性があるかを見極めることが重要
・ハラスメントや心身への不調がある場合は、早めの退職を検討すべきケースもある
・自分で退職を言い出せない場合は、弁護士へ相談する方法もある
・勢いだけで退職を決断せず、状況に応じた最善の選択をすることが大切
人間関係が原因で仕事を辞めたい人は多い

人間関係は、仕事を辞める理由として常に上位に挙げられます。仕事内容や給与に大きな不満がなくても、「職場の人間関係だけがつらい」という理由で退職を決断する人は珍しくありません。
人間関係の悩みは、放置すると仕事への意欲や心身の健康にも影響を及ぼします。ここでは、退職理由になりやすい代表的なケースを紹介します。
上司との相性・パワハラ気質の職場
人間関係の悩みで最も多いのが、上司との関係です。威圧的な態度や人格を否定する発言、過度な叱責など、パワハラに該当する行為が日常的に行われている職場では、大きな精神的負担を抱えることになります。
また、パワハラに該当しない場合でも、上司との価値観や仕事の進め方が合わず、強いストレスを感じるケースも少なくありません。
同僚・先輩とのトラブル
同僚や先輩との人間関係が原因で仕事を辞めたいと考える人もいます。仕事を教えてもらえない、無視される、陰口を言われるなどの行為が続くと、職場へ行くこと自体が苦痛になることもあります。毎日顔を合わせる相手だからこそ、小さなトラブルでも積み重なると大きなストレスにつながります。
職場の雰囲気・コミュニケーション不足
特定の相手とのトラブルがなくても、職場全体の雰囲気が合わないことがあります。相談しづらい環境や、失敗を責める文化、社員同士のコミュニケーションが極端に少ない職場では、孤立感を覚えやすくなります。こうした職場環境は、長く働くほど精神的な負担が大きくなり、退職を考えるきっかけになることも少なくありません。
人間関係で仕事を辞めるのは甘えなのか

人間関係を理由に退職を考えると、「これくらいで辞めるのは甘えではないか」と自分を責めてしまう人もいます。しかし、人間関係の悩みは多くの人が退職理由として挙げている問題です。一方で、一時的な感情だけで退職を決断すると後悔する可能性もあります。
人間関係は退職理由の上位である以上、正当な理由になり得る
人間関係は、仕事を辞める理由として毎年上位に挙げられています。上司との相性やパワハラ、同僚とのトラブルなど、人間関係が原因で仕事を続けられなくなるケースは決して珍しくありません。
特に、精神的なストレスによって体調不良や睡眠不足、仕事への意欲低下などが生じている場合は、「我慢が足りない」のではなく、職場環境そのものに問題がある可能性もあります。人間関係を理由に退職することは、決して特別なことではありません。
一方で勢いだけの退職・一時的な感情での判断は避けたい
一方で、強いストレスを感じた直後や、上司と口論した勢いで退職を決断することはおすすめできません。人間関係の悩みが一時的なものなのか、それとも今後も改善する見込みがないのかを冷静に見極めることが大切です。
例えば、近いうちに部署異動が予定されている場合や、相談によって職場環境が改善する可能性がある場合は、退職以外の選択肢も検討する価値があります。
人間関係で仕事を辞めるべきか判断する基準

人間関係がつらいからといって、すぐに退職すべきとは限りません。一方で、我慢を続けることで心身の健康を損ない、仕事や私生活に深刻な影響を及ぼすケースもあります。ここでは、人間関係を理由に退職するかどうかを判断する際に確認したいポイントを紹介します。
改善の見込みがあるか
最初に確認したいのは、現在の人間関係が改善する可能性があるかどうかです。例えば、担当業務の変更や部署異動、上司との面談などによって状況が改善する見込みがあるのであれば、退職以外の選択肢も検討できます。
一方で、長期間同じ問題が続いている場合や、会社に相談しても何も変わらない場合は、今後も状況が改善する可能性は高くありません。
ハラスメントの有無
上司や同僚から暴言や人格否定、無視、過度な叱責などを受けている場合は、ハラスメントに該当する可能性があります。このような職場環境では、無理に働き続けることで精神的な負担が大きくなります。会社の人事へ相談しても改善されない場合は、退職や転職を検討することも選択肢の一つです。
心身に不調のサインが出ているか
仕事へ行こうとすると体調が悪くなる、夜眠れない、食欲がない、休日も仕事のことばかり考えてしまうなどの症状が続いている場合は注意が必要です。こうした状態を我慢し続けると、適応障害やうつ病などにつながるおそれもあります。
心身の不調が現れている場合は、「もう少し頑張れば大丈夫」と無理をするのではなく、自分の健康を優先して判断することが大切です。
人間関係を理由に辞めない方がいいケース

人間関係に悩んでいても、すぐに退職することが最善とは限りません。問題の原因や状況によっては、時間の経過や環境の変化によって改善する可能性もあります。ここでは、一度立ち止まって状況を見極めた方がよいケースを紹介します。
入社して日が浅い
入社して間もない時期は、新しい職場や人間関係に慣れていないことから、不安やストレスを感じやすい傾向があります。仕事の進め方や職場のルールが分からず、人間関係がうまく築けていないだけというケースも少なくありません。
もちろん、ハラスメントや労働条件の相違がある場合は別ですが、単に環境へ慣れていないだけであれば、一定期間様子を見ることで状況が改善することもあります。
一時的なトラブル・近く異動の予定がある
現在の人間関係が一時的なものであれば、退職以外の選択肢も検討する価値があります。例えば、担当プロジェクトの終了や人事異動によって、一緒に働くメンバーや上司が変わる予定がある場合は、職場環境が大きく改善する可能性があります。
退職はいつでもできますが、一度退職すると元の職場へ戻ることは簡単ではありません。近いうちに環境が変わる見込みがある場合は、そのタイミングまで様子を見る判断も一つの方法です。
自分にも改善できる点がある
人間関係のトラブルは、必ずしも相手だけに原因があるとは限りません。コミュニケーション不足や伝え方の違い、思い込みなどが原因で、お互いに誤解が生じているケースもあります。自分の言動や接し方を少し見直すことで、人間関係が改善することもあるため、一度冷静に振り返ってみることも大切です。
相談できる同僚・上司がいる
職場に信頼できる同僚や上司がいる場合は、一人で悩みを抱え込まないようにしましょう。客観的な意見を聞くことで、自分では気付かなかった解決策が見つかることもあります。
また、人事や上司へ相談することで、部署異動や業務内容の調整など、会社が対応してくれる可能性もあります。退職を決断する前に、利用できる制度や相談先がないか確認してみることをおすすめします。
人間関係が原因で仕事を辞める前にできる対処法

人間関係に悩んでいても、すぐに退職を選ぶ必要はありません。問題の内容によっては、会社の制度や相談窓口を利用することで状況が改善するケースもあります。ここでは、退職を決断する前に検討したい対処法を紹介します。
休職という選択肢
人間関係によるストレスで心身に不調が現れている場合は、休職を検討することも選択肢の一つです。一定期間仕事から離れることで、心身を回復させながら今後の働き方を冷静に考えられるようになります。ただし、休職制度の利用条件や休職中の給与の取り扱いは会社によって異なるため、就業規則などを確認しておきましょう。
社外の相談窓口を利用する
社内へ相談しにくい場合や、相談しても改善が見込めない場合は、社外の相談窓口を利用する方法もあります。各都道府県の労働局に設置されている総合労働相談コーナーでは、職場のハラスメントや労働条件などについて無料で相談できます。
また、法的なトラブルが予想される場合や、自分では退職を言い出せない状況にある場合は、弁護士へ相談することで状況に応じた適切なアドバイスを受けることができます。
転職先の面接で「人間関係」をどう伝えるか

人間関係が原因で退職した場合、転職活動で退職理由をどのように説明すればよいか悩む人も多いでしょう。実際に人間関係が原因で退職する人は少なくありませんが、面接で伝え方を間違えると、「他責思考ではないか」「入社後も同じ理由で辞めるのではないか」と受け取られる可能性があります。
不平不満に聞こえない言い換え方
面接では、上司や会社の悪口をそのまま伝えることは避けましょう。例えば、「上司が最悪だった」「人間関係が悪かった」といった表現では、不満だけが強く伝わってしまいます。
一方で、「仕事の進め方や職場の価値観が自分と合わず、長期的に働き続けることが難しいと判断しました」のように、事実を客観的に伝えることで、冷静に判断した結果であることを説明できます。
ポジティブな伝え方の例文
退職理由を伝える際は、「なぜ辞めたか」だけでなく、「次の職場で何を実現したいか」まで伝えることが大切です。
「前職では人間関係や職場環境が自分に合わず、十分に力を発揮できませんでした。次の職場では周囲と協力しながら長く働ける環境で経験を積みたいと考え、転職を決意しました。」
このように、退職理由を簡潔に説明したうえで、今後の目標や前向きな姿勢を伝えることで、採用担当者にも好印象を与えやすくなります。
人間関係が悪く退職を言い出せない場合の対処法

人間関係が原因で退職を決意しても、「上司へ切り出す勇気が出ない」「引き止められるのが怖い」と悩む人は少なくありません。特に、パワハラや嫌がらせがある職場では、退職を申し出ること自体が大きな精神的負担になります。ここでは、自分で退職を伝えられない場合の対処法を紹介します。
上司が怖くて言い出せない・退職届を受け取ってもらえない
「辞めたい」と伝えたことで怒鳴られたり、退職届の受け取りを拒否されたりするケースは実際にあります。しかし、会社が退職届を受け取らないからといって、退職できなくなるわけではありません。
正社員など期間の定めのない雇用契約であれば、民法627条により、退職の意思を会社へ伝えることで原則として2週間後に退職できます。会社から強く引き止められても、一人で抱え込む必要はありません。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
民法627条 民法電子版(総務省)
退職代行という選択肢
どうしても自分で退職を伝えられない場合は、退職代行を利用する方法があります。退職代行を利用すれば、本人に代わって会社へ退職の意思を伝えてもらえるため、上司と直接話をする必要がありません。
また、退職届の提出方法や貸与物の返却、退職書類の受け取りなどについても案内を受けられるため、精神的な負担を軽減しながら退職手続きを進めることができます。

弁護士による退職代行と民間業者の違い
退職代行には、弁護士と民間業者が提供するサービスがあります。民間業者は退職の意思を会社へ伝えることはできますが、有給休暇の取得や退職条件の交渉、未払い給与の請求など、会社との交渉はできません。
一方、弁護士は法律に基づいて会社との交渉やトラブル対応を行うことができます。人間関係が悪く、「退職を認めない」「嫌がらせを受けそう」といった不安がある場合は、法的に対応できる弁護士へ依頼することで、より安心して退職手続きを進められるでしょう。
また、昨今よく見受けられる「労働組合型退職代行」も注意が必要です。こちらは民間業者が法的に交渉を可能とするために労働組合に加盟しているだけなので、本質的には民間業者と変わりありません。

人間関係が原因の退職に関するよくある質問
人間関係を理由に退職を考えている方から、よく寄せられる質問をまとめました。
人間関係で仕事を辞めるのは甘えですか?
いいえ、甘えとは言えません。人間関係は退職理由として常に上位に挙げられており、多くの人が同じ悩みを抱えています。ただし、一時的な感情だけで退職を決断するのではなく、改善の見込みや心身への影響を踏まえて判断することが大切です。
転職先でも同じことになる可能性はありますか?
可能性はありますが、必ず同じ問題が起こるとは限りません。退職理由を振り返り、自分に合う社風や働き方を重視して転職先を選ぶことで、人間関係の悩みを減らせる可能性があります。企業研究や面接時の質問を通じて、職場環境を確認することも重要です。
退職代行を利用すると会社から連絡は来ますか?
会社から連絡が来る可能性はあります。ただし、弁護士へ依頼した場合は、本人への直接連絡を控えるよう会社へ伝えることができます。
有給休暇は消化できますか?
はい、有給休暇が残っていれば可能です。会社は一定の場合を除き、有給休暇の取得を一方的に拒否することはできません。

佐藤 秀樹
弁護士
平成12年慶應義塾大学法学部法律学科卒。 平成15年に司法試験合格後、片岡法律事務所入所。
債権回収、相続問題といった一般民事事件から、M&A、事業再生、企業間取引
労務管理、知的財産権などの企業法務まで、数多くの実務に従事する。
平成19年からは慶應義塾大学法科大学院講師(実務家ゼミ担当)及び慶應義塾大学法学研究所講師を務める。
平成21年に弁護士法人みやびを開設し、現在に至る。





